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オフィス退去ガイド|原状回復の費用削減、手続き、スケジュールを解説

オフィス退去が決まったものの、「何から手をつければ…」「費用は一体いくらかかるの?」と不安を感じていませんか?この記事では、退去の全手順からコスト削減の秘訣まで、網羅的に解説します。

この記事で分かること

  • オフィス退去の手順(6か月前から完了までの網羅的チェックリスト)
  • 最も揉めやすい「原状回復」の費用を抑える法的知識と交渉術
  • 引越しや不用品処分費まで含めた、トータルコストを削減する5つの方法
  • 法務局や税務署など、漏らせない行政手続きの完全リスト

オフィス退去の手順チェックリスト(6か月前〜完了まで)

オフィス退去は、計画的な準備が成功の鍵を握ります。「気づいた時にはもう手遅れ…」という事態を避けるために、このタイムラインに沿ってタスクを確認していきましょう。

6か月前:基本方針の決定と契約書の確認

  • 解約予告期間の確認: 賃貸借契約書を取り出し、解約予告が「6か月前」なのか「3か月前」なのかを確認します。これが全てのスケジュールの起点となります。
  • 移転先の検討開始: 現オフィスの退去と同時に、次の拠点をどうするか検討を始めます。完全リモートワークへ移行するのか、より小規模なオフィスにするのか、選択肢によって今後の動きが大きく変わります。
  • プロジェクトチームの発足: 担当者一人に任せるのではなく、総務、経理、ITなど関連部署からメンバーを集め、プロジェクトとして進める体制を整えましょう。

3〜5か月前:解約通知と業者選定

  • 解約通知書の提出: 契約書で定められた予告期間を守り、貸主(オーナーや管理会社)へ書面で解約を通知します。内容証明郵便を利用すると、通知した事実が記録として残るため安心です。
  • 原状回復範囲の確認: 貸主側と、どこまで元に戻す必要があるのか(原状回復義務の範囲)について、最初の協議を行います。契約書の条文を基に、具体的な工事内容を明確にしていきましょう。
  • 複数業者への相見積もり: 引越し業者、原状回復工事業者、不用品回収業者など、必要な業者をリストアップし、最低でも3社以上から見積もりを取るとよいでしょう。

1〜2か月前:各種手続きと内外への告知

  • 業者決定・契約: 見積もり内容を精査し、各業者を決定、契約を締結します。
  • 行政手続きの準備: 法務局への登記変更、税務署への届出など、必要な行政手続きのリストアップと書類準備を進めます。(詳細はセクション4で解説)
  • 取引先・従業員への告知: 移転日、新しい連絡先などを正式に告知します。Webサイトや会社案内の情報更新も忘れずに行いましょう。
  • レイアウト・インフラ準備: 新しいオフィスに移る場合は、レイアウト設計、電話・インターネット回線の手配を進めます。

退去1週間前〜当日

  • 最終荷造り: 通常業務になるべく支障が出ないよう、計画的に荷造りを進めます。
  • 挨拶回り: 近隣のテナントやビル管理会社へ、これまでの感謝を込めて挨拶に伺います。
  • 移転作業の実施・立ち会い: 引越し当日は、作業がスムーズに進むよう指示を出し、搬出・搬入に立ち会います。

退去後

  • 原状回復工事の完了確認: 工事が契約通りに行われたか、貸主と共に最終確認(明け渡しチェック)を行います。
  • 敷金の精算: 原状回復費用などが差し引かれた敷金が返還されます。精算書の内容は必ず詳細に確認しましょう。
  • 各種届出の完了: 移転後に提出が必要な行政手続きを、期限内に完了させます。

退去費用の最大の壁「原状回復」を賢く乗り切る3つの知識

オフィス退去で最も費用がかさみ、トラブルになりがちなのが「原状回復」です。しかし、正しい知識を持つことで、不要なコストを支払うリスクを減らせます。

知識①:「原状回復」と「通常損耗」の違いを理解する

まず知っておくべきは、オフィス賃貸借は、住宅用の賃貸借とはルールが異なるという点です。

住宅の場合、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」※1が広く適用され、壁紙の日焼けや家具の設置による床のへこみといった「通常損耗」や「経年変化」は、原則として貸主の負担とされています。

しかし、オフィスや店舗などの事業用物件では、このガイドラインは直接適用されません。 契約自由の原則に基づき、賃貸借契約書に記載された内容が原則として効力を持ちます。契約書に「通常損耗も借主の負担で原状回復する」という特約があれば、それに従う義務が生じるのです。

多くのオフィス賃貸借契約には、この「通常損耗を含めた全面的な原状回復」を義務付ける特約が含まれているのが一般的です。だからこそ、次のステップが重要になります。

知識②:契約書の「原状回復条項」を再確認する

会社の義務範囲を正確に知る手がかりは、入居時に交わした賃貸借契約書です。以下のポイントを重点的に確認しましょう。

  • 原状回復の定義: 「スケルトン(建物の骨格だけの状態)に戻す」のか、「入居時の状態に戻す」のか。
  • 借主の負担範囲: 「通常損耗を含む」という一文があるか。
  • 工事業者の指定: 「貸主指定の業者で工事を行う」という条項があるか。

もし「貸主指定業者」の条項があったとしても、見積もりが不当に高額な場合は交渉の余地があります。借主側で選定した業者で見積もりを取り、貸主指定業者の見積もりが高すぎる場合の交渉材料とすることは有効です。

知識③:交渉の余地を探る

契約書の内容が絶対とはいえ、交渉の余地が全くないわけではありません。

  • 見積もりの妥当性を問う: 貸主から提示された見積もりに、不自然に高額な項目や、本来貸主が負担すべき修繕(例:ビル全体の空調設備の更新など)が含まれていないか精査します。こちらで取った相見積もりを提示し、「この金額が市場の適正価格ではないか」と交渉するのは有効な手段です。
  • 過去の判例を持ち出す: 小規模なオフィスの場合など、状況によっては住宅用のガイドラインの考え方が参考にされた判例※2も存在します。専門家の助けも借りながら、交渉の糸口を探りましょう。

重要なのは、感情的にならず、契約書と客観的なデータ(相見積もり)に基づいて冷静に協議することです。

オフィス退去費用の内訳と劇的にコストを削減する5つの方法

退去費用を「仕方ない出費」と諦めていませんか?内訳を理解し、ポイントを押さえれば、コストは大幅に削減可能です。

オフィス退去費用の全体像

まず、どのような費用がかかるのか全体像を把握しましょう。

  • 原状回復工事費: 最も大きな割合を占めます。坪単価で5万円〜15万円が相場と言われますが、内装の状況や契約内容により大きく変動します。
  • 引越し費: 荷物の量、移動距離、作業員の数で決まります。
  • 不用品処分費: 廃棄するオフィス家具やOA機器の量に応じてかかります。
  • その他: 新オフィスの契約初期費用、行政手続きの諸費用など。

コスト削減術①:徹底的な相見積もり

これは基本中の基本ですが、最も効果的な方法です。原状回復工事や引越しにおいて、必ず3社以上の業者から見積もりを取りましょう。これにより、適正な市場価格を把握でき、価格交渉の強力な材料になります。

コスト削減術②:什器・備品の売却・寄付

不要になったオフィス家具やPCを、ただの「ゴミ」として処分していませんか?状態の良いものであれば、専門の買取業者に売却できます。値段がつかないものでも、NPO法人などに寄付することで、社会貢献につながり、かつ処分費用を削減できる場合があります。

コスト削減術③:「居抜き退去」を検討する

「居抜き」とは、内装や設備をそのままの状態で次の入居者に引き継ぐ方法です。これが成功すれば、本来数百万かかることもある原状回復工事費をゼロにできる可能性があります。貸主や管理会社に「居抜きでの後継テナントを探すことは可能か」と相談してみましょう。

コスト削減術④:自分でできることは自分で行う

専門的な技術が必要ない範囲、例えば、自分たちで設置した棚の撤去や、簡単な清掃などを従業員で行うことで、業者に依頼する作業範囲を減らし、コストを抑えることができます。ただし、どこまで手をつけて良いかは、必ず事前に貸主と協議してください。

コスト削減術⑤:専門家への相談

原状回復の見積もりが適正か、契約書の内容に問題はないかなど、専門的な知識がなければ判断が難しい場面は多々あります。オフィス移転のコンサルタントや、原状回復費の査定を専門に行うサービスを利用するのも、結果的に大きなコスト削減に繋がる賢い選択です。

漏れなく安心!行政手続き・届出リスト

オフィスの退去と合わせて、オフィス移転をご検討中の場合は、法務局や税務署など、様々な行政機関への届出が法律で義務付けられているので注意しましょう。

法務局

  • 手続き: 本店移転登記申請
  • 期限: 移転日から2週間以内
  • 提出先: 他管轄移転の場合、旧本店所在地を管轄する法務局(新本店所在地の法務局にも申請が必要)

税務署

  • 手続き①: 異動事項に関する届出
  • 手続き②: 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 期限: 手続きにより異なるが、移転後速やかに
  • 提出先: 移転と移転の両方の所轄税務署に提出が必要な場合があります。

都道府県税事務所・市町村役場

  • 手続き: 事業開始(廃止・変更)等申告書
  • 期限: 自治体により異なる(例:東京都は移転後15日以内)
  • 提出先: 移転先の都道府県・市町村

その他

  • 年金事務所: 適用事業所所在地・名称変更(訂正)届
  • 労働基準監督署・ハローワーク: 労働保険名称、所在地等変更届
  • 郵便局: 転居届(1年間、旧住所宛の郵便物を新住所へ無料で転送してくれます)
  • 警察署: 車庫証明の変更登録(社用車がある場合)

これらの手続きは期限が厳格に定められているものも多く、遅れると過料を科される可能性もあります。チェックリストを作成し、計画的に進めましょう。

オフィス退去は「新たな働き方」へのチャンス

オフィス退去は、手間やコストがかかる面倒なイベント、と捉えられがちです。しかし、視点を変えれば、これは自社の事業フェーズや働き方を根本から見直し、固定費を最適化する絶好の機会です。

「本当にこの広さのオフィスが必要だろうか?」「もっと柔軟な働き方はできないか?」

もし、あなたもそう感じているなら、従来の賃貸オフィス以外の選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

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退去をきっかけに、あなたの会社に最適な「未来の働き方」を見つけましょう。

まとめ

オフィス退去は計画的な準備、原状回復の知識、そしてコスト削減の工夫が成功の鍵です。複雑で専門知識が求められるため、専門家への相談も有効な手段です。この記事が、あなたのスムーズなオフィス退去の一助となれば幸いです。

参照・引用元一覧

  1. 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について – 国土交通省: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html 
  2. 東京簡裁 平成17年 8月26日判決 確定 ホームページ下級裁主要 判決情報 – 一般財団法人 不動産適正取引推進機構
    https://www.retio.or.jp/wp-content/uploads/2024/11/65-056.pdf