COLUMNコラム

オフィス移転費用の手引き|人数別シミュレーションからコスト削減の7つの方法まで

企業の成長や働き方の変化に伴い、オフィス移転を検討する場面は少なくありません。しかし、多くの担当者にとって最初の壁となるのが「一体いくらかかるのか?」という費用の問題です。本記事では、複雑で分かりにくいオフィス移転費用について、相場から内訳、賢いコスト削減策まで、オフィス移転費用に関する疑問にお答えします。

この記事で分かること

  • オフィス移転にかかる費用相場(人数別・坪数別)
  • 全費用の詳しい内訳と3つの発生フェーズ
  • 10名・30名・50名規模の具体的な費用シミュレーション
  • すぐに実践できる7つのコスト削減策と注意点

【人数・坪数別】オフィス移転費用の相場

オフィス移転の費用を考えるとき、まず知りたいのが大まかな相場です。もちろん、立地や内装のグレードによって金額は大きく変動しますが、ここでは一般的な目安を「従業員1人あたり」と「坪単価」の2つの視点から見ていきましょう。

従業員1人あたりの費用相場

移転費用を最もイメージしやすいのが、従業員数から計算する方法です。一般的に、従業員1人あたりの費用相場は30万円~60万円です。これには、物件取得費、内装工事費、引越し費用などが含まれます。

例えば、従業員20名の会社であれば、600万円~1,200万円程度が目安となります。ただし、これはあくまで標準的なオフィスを想定したケースです。デザイン性の高い内装にしたり、最新のIT設備を導入したりする場合は、1人あたり100万円を超えることもあります。

坪単価での費用相場

もう一つの目安が、オフィスの面積(坪数)から計算する方法です。1坪あたり20万円~50万円が一般的な相場とされています。

例えば、50坪のオフィスに移転する場合、1,000万円~2,500万円が目安となります。都心の一等地や新築ビルなど、賃料の高い物件ほど、この坪単価も上昇する傾向にあります。

オフィス移転費用の全内訳を3つのフェーズで解説※1

オフィス移転の費用は、大きく分けて「旧オフィスの退去」「新オフィスの入居」「引越し作業」の3つのフェーズで発生します。ここでは、それぞれのフェーズでどのような費用がかかるのか、勘定科目にも触れながら詳しく見ていきましょう。

フェーズ1:旧オフィスの原状回復・解約費用

まず、現在入居しているオフィスから退去するために必要な費用です。

  • 原状回復工事費: オフィスを借りる前の状態に戻すための工事費用です。これが退去費用の大部分を占めます。坪単価で3万円~10万円程度が相場です。勘定科目は「修繕費」として処理するのが一般的です。
  • 解約予告期間の賃料: 賃貸借契約書で定められた期間(通常3ヶ月~6ヶ月前)に解約を予告する必要があり、その期間の賃料が発生します。
  • 産業廃棄物処理費: 古くなったオフィス家具やOA機器などを処分するための費用です。

フェーズ2:新オフィスの契約・内装工事費用

次に、新しいオフィスに入居するために必要な費用です。

  • 保証金(敷金): 賃料の6ヶ月~12ヶ月分が相場です。退去時に原状回復費などを差し引いて返還されるため、会計上は「差入保証金」として資産計上します。
  • 礼金・仲介手数料: それぞれ賃料の1ヶ月分が相場です。これらは返還されない費用で、「支払手数料」などの勘定科目で経費処理します。
  • 前払賃料・共益費: 入居する月の賃料を事前に支払います。
  • 火災保険料: 万が一に備え、加入が義務付けられている場合がほとんどです。
  • 内装・設備工事費: 間取りの変更、電気・通信工事、空調設備の設置など、働きやすい環境を整えるための費用です。デザインや規模によりますが、坪単価10万円~30万円程度が目安です。

フェーズ3:引越し・その他費用

最後に、実際の引越し作業や、移転に伴って発生する諸費用です。

  • 引越し作業費: 荷物の梱包、運搬、開梱にかかる費用です。従業員1人あたり2万円~5万円が目安です。勘定科目は「支払手数料」や「雑費」で処理します。
  • オフィス家具・OA機器購入費: デスクや椅子、PC、複合機などを新調する場合の費用です。
  • 各種届出・手続き費用: 法務局への登記変更、官公庁への届出、住所変更に伴う印刷物の作成など、細かな費用が発生します。

【人数別】オフィス移転の費用シミュレーション

では、実際にあなたの会社が移転する場合、総額はいくらになるのでしょうか。ここでは、従業員数10名、30名、50名の3つのモデルケースで、具体的な費用をシミュレーションしてみましょう。

※以下のシミュレーションは、都内の中規模ビルを想定した一般的なモデルであり、実際の費用を保証するものではありません。

モデルケース1:従業員10名(30坪)の場合

比較的小規模な移転。基本的な設備投資が中心となります。

費用項目金額(目安)備考
旧オフィス関連費用
原状回復工事費90万円坪単価3万円で計算
新オフィス関連費用
保証金(賃料6ヶ月分)180万円賃料30万円/月と想定
仲介手数料・礼金60万円各1ヶ月分
内装工事費300万円坪単価10万円。基本的な間仕切り・電気工事
引越し・その他費用
引越し作業費30万円1人あたり3万円
家具・OA機器購入費100万円1人あたり10万円
ネットワーク・インフラ構築費20万円
諸経費(登記変更・印刷物など)20万円
予備費(全体の5%)約40万円
合計約840万円

モデルケース2:従業員30名(90坪)の場合

複数の会議室や、しっかりとしたITインフラが必要になる規模です。外部の専門家(プロジェクトマネージャー)への依頼も視野に入ります。

費用項目金額(目安)備考
旧オフィス関連費用
原状回復工事費270万円坪単価3万円で計算
新オフィス関連費用
保証金(賃料6ヶ月分)540万円賃料90万円/月と想定
仲介手数料・礼金180万円各1ヶ月分
内装工事費1,080万円坪単価12万円。会議室増設、セキュリティ強化を考慮
引越し・その他費用
プロジェクト管理費110万円内装工事費の約10%
引越し作業費85万円規模の経済を反映し、1人あたり単価は若干低下
家具・OA機器購入費320万円会議室用AV機器などを含む
ネットワーク・インフラ構築費50万円
諸経費(登記変更・印刷物など)40万円
予備費(全体の5%)約130万円
合計約2,725万円

モデルケース3:従業員50名(150坪)の場合

企業のブランディングを意識したデザインや、従業員満足度向上のためのリフレッシュスペースなど、追加投資の必要性が高まります。

費用項目金額(目安)備考
旧オフィス関連費用
原状回復工事費450万円坪単価3万円で計算
新オフィス関連費用
保証金(賃料6ヶ月分)900万円賃料150万円/月と想定
仲介手数料・礼金300万円各1ヶ月分
内装工事費2,250万円坪単価15万円。デザイン性の高い内装、リフレッシュスペース設置などを考慮
引越し・その他費用
プロジェクト管理費225万円内装工事費の10%
引越し作業費125万円規模の経済を反映
家具・OA機器購入費550万円リフレッシュスペース用家具などを含む
ネットワーク・インフラ構築費80万円サーバールームなども考慮
諸経費(登記変更・印刷物など)60万円
予備費(全体の5%)約250万円
合計約4,990万円

「居抜き」vs「スケルトン」費用で比較するメリット・デメリット

オフィス移転の初期費用を大きく左右するのが、物件の状態です。「居抜き」と「スケルトン」、それぞれの特徴を費用面から比較してみましょう。

居抜きオフィスの特徴

「居抜き」とは、前のテナントが使用していた内装や設備がそのまま残っている物件のことです。

  • メリット: 内装工事が不要、または最小限で済むため、初期費用を大幅に削減できます。また、入居までの期間も短縮できます。
  • デメリット: レイアウトの自由度が低く、自社のコンセプトに合わない可能性があります。また、設備の老朽化にも注意が必要です。
  • 費用感: スケルトンに比べ、内装工事費を50%以上削減できるケースも少なくありません。

スケルトンオフィスの特徴

「スケルトン」とは、建物の構造躯体のみで、内装が何もない状態の物件です。

  • メリット: 間取りやデザインをゼロから自由に設計できるため、企業のブランドイメージや働き方に合わせた理想のオフィス空間を実現できます。
  • デメリット: 内装工事に多額の費用と時間がかかります。坪単価で20万円~40万円程度の工事費が追加で必要になることもあります。
  • 費用感: こだわるほど費用は高くなりますが、企業のビジョンを反映したオフィスは、従業員の満足度や生産性向上に繋がるという投資的な側面もあります。

どちらを選ぶべきかは、企業の予算、スケジュール、そしてオフィスに何を求めるかによって決まります。コストを最優先するなら「居抜き」、オリジナリティを重視するなら「スケルトン」が有力な選択肢となるでしょう。

さらに初期費用を抑え、柔軟なオフィス運用を実現したいという方には、レンタルオフィスもおすすめです。内装工事や原状回復義務が不要で、すぐにビジネスを開始できるため、スタートアップやプロジェクト単位での利用にも最適です。

予算オーバーを招く3つの落とし穴

計画通りに進めたつもりでも、オフィス移転では想定外のコストが発生しがちです。ここでは、予算オーバーに繋がる特に注意すべき3つのポイントを解説します。

落とし穴1:甘く見ていた「原状回復工事費」
特にトラブルの要因となりやすいのが、旧オフィスの原状回復費用です。賃貸借契約書をよく確認せず、「敷金で相殺できるだろう」と安易に考えていると危険です。特に、長年入居していたり、特殊な内装を施していたりすると、想定の倍以上の費用を請求されるケースも少なくありません。必ず契約書を確認し、事前に専門業者から見積もりを取っておきましょう。

落とし穴2:見落としがちな「B工事」の存在
オフィスの内装工事には、テナント側が業者を選んで発注する「C工事」の他に、ビルの指定業者しか施工できない「B工事」が存在します。これは、空調、防災設備、防水など、ビル全体の資産に関わる重要な工事です。B工事は相見積もりが取れず、費用が高額になりがちで、予算を圧迫する大きな要因です。物件選定の段階で、B工事の範囲と過去の費用実績を必ず確認しましょう。

落とし穴3:後から次々と発生する「諸経費」
引越し費用や内装費といった大きな金額に目が行きがちですが、細かな諸経費も積み重なると大きな負担になります。例えば、新しい会社案内の印刷費、Webサイトの住所変更作業費、取引先への移転挨拶状の郵送費、各種登記の変更手数料などです。これらをリストアップせずにいると、最終的に数十万円単位で予算を超過する可能性があります。

オフィス移転費用を効果的に抑える7つの方法※2

多額の費用がかかるオフィス移転ですが、工夫次第でコストを賢く削減することが可能です。ここでは、すぐに実践できる7つの方法をご紹介します。

余裕を持ったスケジュールを組む

移転計画は最低でも半年前からスタートしましょう。時間に余裕があれば、複数の業者をじっくり比較検討でき、価格交渉も有利に進められます。

なぜ時間が必要なのか?

  • 業者選定の選択肢が広がる: 短期間での依頼は、対応できる業者が限られてしまい、結果的に割高な業者を選ばざるを得なくなる可能性があります。複数の業者をじっくり比較検討することで、価格競争が生まれ、コストを抑えられます。
  • 不要な追加費用の発生を防ぐ: スケジュールがタイトだと、時間外労働による「特急料金」や、通常より高価な資材を使わざるを得ない状況が発生しがちです。計画的な進行は、こうした予期せぬ出費を防ぎます。

交渉時間を確保できる: 賃料交渉や内装工事の見積もり精査など、コスト削減に繋がる重要な交渉には時間がかかります。焦って契約を進めてしまうと、本来受けられたはずの割引やサービスを逃すことになりかねません。相見積もりを徹底する

内装工事業者や引越し業者は、必ず3社以上から見積もりを取りましょう。サービス内容と価格を比較することで、数十万円単位のコスト削減に繋がることも珍しくありません。

比較検討のポイント:

  • 金額の内訳: 単純な総額だけでなく、「何にいくらかかっているのか」を詳細に比較しましょう。一見安く見えても、必要な項目が漏れていて後から追加費用を請求されるケースもあります。
  • サービス内容: アフターフォローの有無、作業員の人数、梱包資材の種類など、金額には表れにくいサービス内容もしっかり比較することが重要です。
  • 実績と信頼性: 安さだけで選ぶのではなく、過去の実績や口コミなども参考に、信頼できる業者を選びましょう。

フリーレント交渉を行う

フリーレントとは、一定期間の賃料が無料になる契約のことです。特に空室期間が長い物件では、交渉に応じてもらえる可能性が高まります。

フリーレント交渉は、契約前の申し込み段階で行うのが鉄則です。貸主側も空室を早く埋めたいと考えているため、「フリーレントを付けてくれるなら、すぐに契約したい」といった意思表示が有効な場合があります。一般的には1ヶ月〜3ヶ月、物件によっては6ヶ月程度のフリーレントが付くこともあります。既存の家具や備品を再利用する

全てを新調するのではなく、まだ使えるデスクや椅子はクリーニングや修理をして再利用しましょう。廃棄費用と購入費用の両方を削減できます。

「居抜き」や「セットアップオフィス」を検討する

前述の通り、居抜きオフィスは内装工事費を大幅に削減できます。また、最近では内装や家具が予め備え付けられた「セットアップオフィス」も人気です。

参考:居抜き物件との費用比較

居抜き物件(前の入居者の内装が残っている)で軽微な改修で済む場合、坪単価5万円〜15万円程度に抑えられる場合があります。同じ50坪なら250万円〜750万円となり、数百万円〜1,000万円以上のコスト削減に繋がることになるので検討してみてはいかがでしょうか。

補助金・助成金を活用する

自治体によっては、オフィス移転に利用できる補助金や助成金制度があります。例えば、東京都では創業期の企業を対象とした「創業助成事業」などで、事務所賃借料が助成対象となる場合があります。これらは「(移転先の自治体名) オフィス移転 補助金」「(事業内容) 助成金」などのキーワードで検索したり、中小企業支援センターなどの公的機関に相談したりするのがおすすめです。申請には期間や要件があるため、早めに情報収集を始めましょう。

参考支援制度の例:

  • 創業支援: 東京都の「創業助成事業」のように、創業期の企業の事務所賃借料などを助成する制度。
  • 地方移転・拠点拡充: 特定の地域への移転やサテライトオフィスの設置を支援する制度。
  • 事業拡大・雇用促進: 事業拡大に伴う移転や、移転による新規雇用を条件とした助成金

専門のコンサルティング会社に相談する

オフィス移転の専門家は、コスト削減のノウハウを豊富に持っています。物件探しから業者選定まで一括で依頼することで、結果的に全体の費用を抑えられる可能性があります。

移転を成功に導く準備スケジュールと費用

オフィス移転を成功させるには、計画的なスケジュール管理が不可欠です。いつ、何をすべきで、どのタイミングで費用が発生するのかを把握しておきましょう。

時期主なタスクこの時期に発生する主な費用
6~12ヶ月前・移転プロジェクトチームの発足・現オフィスの課題と新オフィスの要件定義・移転の全体予算とスケジュールの策定・物件探し、情報収集の開始(この段階では大きな費用発生は少ない)
4~6ヶ月前・物件の選定、内覧・レイアウト・内装デザイン会社の選定・旧オフィスの解約予告 (契約書確認)・仲介手数料・前払賃料・保証金(敷金)
2~3ヶ月前・内装工事の契約、工事開始・引越し業者の選定・契約・新規購入するオフィス家具・OA機器の選定・内装工事費 (着手金など)・オフィス家具・OA機器購入費
1ヶ月前~移転日・各種行政手続き(登記、消防署、警察署など)・電話・インターネット回線の手続き・荷造り、ラベリング・取引先への移転通知・引越し作業費・各種手続き費用・旧オフィスの最終賃料
移転後・荷解き、オフィス環境の整備・旧オフィスの原状回復工事・各種住所変更作業(Webサイト、名刺など)・原状回復工事費・産業廃棄物処理費・(想定外の修繕費など)

あわせて読みたい:オフィス移転の進め方ガイド|基本を押さえる チェックリスト・費用・スケジュール

まとめ

オフィス移転は、費用の全体像を把握し、計画的に進めることが成功に不可欠です。相場を理解し、自社に合った物件選びとコスト削減策を実践することで、予算内で理想のオフィスを実現することは十分に可能です。この記事が、あなたのオフィス移転プロジェクトの一助となれば幸いです。

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参照・引用元一覧

※1:オフィス移転時の会計処理とコストを解説 – MEC-i (https://office.mecyes.co.jp/column/detail/133) – 移転費用の会計処理や勘定科目について詳細に解説。
※1:引っ越し費用や事務所移転費の仕訳に使える勘定科目まとめ – マネーフォワード クラウド (https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/56898/) – 移転に関わる費用の仕訳方法について具体的に説明。
※2:創業助成金(東京都中小企業振興公社) (https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/finance/sogyo_josei.html) – 東京都の公式な助成金情報を提供。
※2:オフィス移転に使える補助金・助成金|働きやすい職場づくりを支援 – トッパン・フォームズ株式会社 (https://forest.toppan.com/expace/columns/sqrhz_z0gg9/) – オフィス移転で活用できる補助金制度について紹介。