オフィスにファミレス席(ボックス席)を導入するメリットと運用のポイント

オフィスにおける共通の課題として、会議室不足や打ち合わせスペースの確保が挙げられます。本記事では、その解決策として注目される「ファミレス席」について、メリットから導入後の運用まで、後悔しないための知識を網羅的に解説します。
この記事で分かること
- ファミレス席がもたらす3つの導入メリット(コミュニケーション、集中、コスト)
- 後悔しないための現実的なデメリットと具体的な対策
- すぐに使える5つの効果的なレイアウトパターン
- 導入効果を最大化するための実践的な運用ルール
Contents
なぜ今「ファミレス席」がオフィスで人気なのか?3つの導入メリット

近年、多くの企業がオフィスに「ファミレス席(ボックス席)」を取り入れています。現代の働き方が抱える課題を解決し、組織を活性化させる具体的な効果が期待できるからです。ここでは、経営層やマネジメント層にも響く3つの導入メリットを、組織課題解決の視点から解説します。
メリット1:偶発的なコミュニケーションの創出
固定席のオフィスでは、どうしても部署内や決まったメンバーとの会話に偏りがちです。あなたも、他部署の人がどんな仕事をしているか、意外と知らないと感じたことはありませんか?
ファミレス席は、この「見えない壁」を取り払うきっかけになります。会議室のように予約する必要がなく、誰でも気軽に立ち寄れるオープンな雰囲気は、まさに「井戸端会議」の現代版。通りかかった他部署のメンバーが自然と会話に加わり、そこから新しいプロジェクトのヒントが生まれたり、部署を横断した連携がスムーズになったりする。こうした偶発的なコミュニケーション(セレンディピティ)が、組織の創造性を高める上で非常に重要です。
実際の運用現場では、ファミレス席を設置したことで「以前より格段に他部署との連携が取りやすくなった」という声が多く聞かれます。これは、ソファとテーブルが作り出す適度な距離感が、心理的な話しやすさを生んでいると考えられます。
メリット2:集中とWeb会議の質の向上
オープンなオフィスは開放感がある一方で、「周囲の視線や雑音が気になって集中できない」という課題も生みがちです。特に、オンラインでの商談や1on1ミーティングが増えた今、プライバシーを確保できる空間の重要性が増しています。
ここでファミレス席が効果を発揮します。背もたれの高いソファやパネルで囲われたデザインは、視線を適度に遮り、周囲の音を和らげる「半個室」としての機能を持っています。これにより、従業員は自分の作業に没頭したり、周囲を気にせずWeb会議に集中したりできます。
これは、仕事内容に合わせて最適な場所を自ら選ぶ働き方「ABW(Activity Based Working)」の考え方にも合致します。株式会社オカムラの調査によると、ABWを実践するワーカーは、仕事内容に合わせて働く場所を変えることで、生産性や満足度の向上を実感しているという結果が出ています。※1集中したい時はファミレス席、コラボレーションしたい時はオープンなテーブル席、というように、従業員が自律的に働く場所を選ぶことで、生産性の向上が期待できるのです。
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メリット3:省スペースとコスト削減効果
オフィスのリニューアルや移転を担当する方にとって、コストとスペース効率は常に頭を悩ませる問題でしょう。例えば、8人用の会議室を一つ新設するには、壁の設置や空調、照明工事などで150万〜300万円ほどの費用がかかることも珍しくありません。
その点、ファミレス席は非常に効率的です。大掛かりな工事は不要で、製品のグレードによって価格は大きく異なりますが、一般的に会議室を新設するよりも導入コストを抑えることが可能です。
これにより、会議室新設に比べて導入コストを抑えつつ、会議室不足の問題緩和が期待できます。また、省スペース性も利点です。8人用の会議室を1つ作るスペースに4人掛けのファミレス席を2セット設置すれば、同じ面積でより多くの打ち合わせを同時に行え、スペースの利用効率が格段に向上します。「会議室が足りない」という課題を、コストを抑えながらスマートに解決できるのです。
導入前に知るべきデメリットと対策

多くのメリットがあるファミレス席ですが、もちろん良い面ばかりではありません。導入してから「こんなはずではなかった…」と後悔しないために、現実的なデメリットと、それを乗り越えるための具体的な対策を事前に理解しておきましょう。
デメリット1:利用人数が限られる
ファミレス席は、その構造上、2人〜4人程度の少人数での利用が基本となります。そのため、5人以上のグループミーティングや、部署全体の定例会議などには対応できません。
【対策】
他のスペースとの役割分担を明確にすることで解決できます。大人数での会議は既存の会議室で行い、ファミレス席は「少人数でのクイックな打ち合わせ」や「個人での集中作業」に特化させるのです。導入前に、自社でどのような利用シーンが多いのかを分析し、必要な席数やサイズを検討することが重要です。
デメリット2:長時間の作業には不向きな場合も
ファミレスの座席を思い出してみてください。食事や短い会話には快適ですが、何時間も同じ姿勢でパソコン作業をするには、少し窮屈に感じることはありませんか?オフィス用のファミレス席も同様に、製品によっては長時間のデスクワークには向かない場合があります。
【対策】
ここでも用途の明確化が鍵となります。ファミレス席はあくまで「短時間の打ち合わせ」や「気分転換のための作業場所」と位置づけ、長時間の執務は人間工学に基づいて設計されたデスクとチェアで行う、という使い分けをルール化しましょう。これにより、従業員の健康を守りつつ、ファミレス席のメリットを最大限に活かすことができます。
デメリット3:会話が周囲に聞こえる可能性(半個室・集中ブースとしての限界)
ファミレス席は「半個室」として手軽なプライバシーを提供しますが、完全に密閉された空間ではありません。そのため、会話の内容が周囲に漏れてしまう可能性はゼロではなく、機密性の高い会話には注意が必要です。特に、人事評価や未公開のプロジェクトに関する情報を扱う場合は、この「半個室としての限界」を理解しておく必要があります。
【対策】
機密性の確保が最優先で、会議室不足の根本的な解決策を探している場合は、防音性の高い個室型「集中ブース」の設置も併せて検討しましょう。ファミレス席で対策する場合、最も効果的なのは設置場所の工夫です。執務エリアから少し離れた場所に置くことで、会話の漏洩リスクを低減できます。また、より遮音性を高めたい場合は、吸音パネルを備えた製品を選ぶことも有効です。
設置場所で考える!ファミレス席の効果的なレイアウトパターン5選

ファミレス席の導入効果は、そのレイアウトに大きく左右されます。「どこに」「どのように」置けば効果的なのか、具体的なシーンを想像しながら、自社に最適なスタイルを見つけていきましょう。
パターン1:窓際に設置する「カフェテリア」スタイル
日当たりの良い窓際に、背もたれの高いソファを対面で配置します。中央のテーブルでノートPCを広げれば、まるで景色の良いカフェで仕事をしているような開放感が得られます。リフレッシュ効果も高く、煮詰まった思考をリセットしたい時に最適な、創造性を刺激する空間です。
パターン2:執務エリアの角に置く「半個室」スタイル
普段はデッドスペースになりがちなオフィスの隅。ここにL字型のソファやパネルを組み合わせた席を設置してみましょう。壁とパネルに囲まれることで、執務エリアの喧騒から物理的・心理的に切り離された、集中力を高めるための「こもり感」のある空間が生まれます。
パターン3:オフィスの中心に配置する「ハブ」スタイル
人の往来が多い動線の中心にあえてファミレス席を配置します。これは、組織の「ハブ(中心)」としての役割を担います。異なる部署のメンバーが自然と顔を合わせ、腰掛けて短い言葉を交わす。そこから新しいアイデアの種が芽生えたり、部署間の連携が円滑になったりする効果が期待できます。
パターン4:壁際に並べる「ライブラリー」スタイル
壁に沿って複数のファミレス席を整然と並べると、まるで図書館の閲覧席のような、静かで知的な雰囲気が生まれます。各々が静かに集中作業に取り組んだり、必要に応じて隣の席の同僚と小声で相談したりと、個人の集中とチームの緩やかな連携を両立させたい場合に有効なレイアウトです。
パターン5:複数台を組み合わせる「コラボレーション」スタイル
4人掛けのボックス席を2つ隣り合わせに配置します。普段は別々のチームが使っていても、時にはソファを動かして8人程度のグループでディスカッションを行うなど、プロジェクトの状況に応じて柔軟なコラボレーションを促進できます。固定された会議室にはない、ダイナミックな使い方が可能です。
多様なレイアウトを自社で構築するのが難しい場合は、fabbitの貸会議室・イベントスペースも有効な選択肢です。
導入効果を最大化する!ファミレス席の運用ルール3つのポイント

せっかくファミレス席を導入しても、「一部の人が独占してしまう」「結局誰も使わない」といった状況に陥っては意味がありません。そうした失敗を防ぎ、導入効果を最大化するための、今日から使える実践的な運用ルールをご紹介します。※2
ポイント1:利用目的と時間制限のルール化
最も重要なのが、ルールの明確化と共有です。例えば、「集中作業は1回60分まで」「Web会議での利用を優先する」「食事は禁止」といった具体的なルールを策定し、ファミレス席の近くに分かりやすく掲示しましょう。これにより、利用者の間で不公平感が生まれるのを防ぎ、譲り合いの文化を醸成できます。より厳密に管理したい場合は、予約システムを導入するのも一つの手です。
ポイント2:誰のための席かを明確にする
「あの席はいつも同じ部署の人が使っている」「新人はなんとなく使いづらい」といった心理的な障壁は、利用率を低下させる大きな原因です。これを防ぐためには、「この席は役職や部署に関係なく、全社員のための共有スペースである」ということを明確に発信し続ける必要があります。役員や管理職が率先して利用する姿を見せることも、部下が使いやすくなる雰囲気を作る上で非常に効果的です。
ポイント3:定期的な利用状況のヒアリング
ルールは一度作ったら終わりではありません。実際に運用すると、「Web会議では声が響く」「席数を増やしてほしい」といった、現場ならではの意見や要望が出てくることがあります。定期的に従業員へアンケートを取ったり、ヒアリングの機会を設けたりして、利用実態を把握しましょう。そのフィードバックを元に、設置場所を見直したり、ルールを改善したりすることで、ファミレス席はより価値のある場所に進化していきます。
ファミレス席導入だけが正解じゃない?新しいオフィスの選択肢

ここまで、自社オフィスにファミレス席を導入するメリットや方法について解説してきました。しかし、本当にすべての企業にとって、それが唯一の正解なのでしょうか?
オフィスの改修には、多大なコストと時間がかかります。また、一度レイアウトを決めてしまうと、事業内容の変化や人員の増減に柔軟に対応することが難しくなるという側面もあります。
もしあなたが、「オフィス構築の手間やコストをかけずに、最適な作業環境を手に入れたい」と考えているなら、レンタルオフィスやコワーキングスペースという選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。これらのサービスを利用すれば、必要な時に必要なだけ会議室や集中ブースを使うことができます。自社でファミレス席を設置・管理する手間をかけることなく、従業員に多様で快適な執務環境を提供できるのです。
まとめ
オフィス内のファミレス席は、コミュニケーションと集中の両立を可能にする有効なツールです。しかし、その導入や運用には工夫が必要です。本記事で解説した視点が、自社に最適なオフィスのあり方を検討し、生産性の高い働き方を実現する一助となれば幸いです。
参照・引用元一覧
- 株式会社オカムラ: ABW実態調査 – https://www.okamura.co.jp/office/knowledge/006231.html
- フリーアドレス化には運用ルール作成が重要|必要な事前準備も解説 – コクヨマーケティング株式会社: https://www.kokuyo-marketing.co.jp/column/freeaddress-abw/post-79/ – 導入後の運用ルールに関するセクションで参照。
