COLUMNコラム

ABWについて徹底解説|フリーアドレスとの違いから導入メリット、成功のポイントまで

多くの企業がリモートワークやハイブリッドワークを導入しましたが、一方で「コミュニケーションが減った」「最適な仕事場所がない」といった新たな課題も生まれています。

その解決策として今、世界中の企業から注目を集めているのがABW(Activity Based Working)という考え方です。

「フリーアドレスのことでしょう?」と思われたなら、それは少し違います。ABWは、単に席を自由にするだけでなく、従業員一人ひとりの生産性と満足度を最大化することを目的とした、より戦略的なワークプレイスの思想です。※1

この記事では、ABWの基本からフリーアドレスとの違い、導入を成功させるポイントまでを分かりやすく解説します。自社に最適な働き方を考えるヒントとしてご活用ください。

この記事でわかること

  • 業務内容に合わせて働く場所を自ら選ぶABWの基本と、省スペース化が目的のフリーアドレスとの根本的な違い
  • 生産性や従業員満足度の向上、コミュニケーションの活性化といった、ABWを導入する5つの具体的なメリット
  • 導入を成功に導くための3つの重要ポイントと、高集中や共同作業といった多様な活動に対応するオフィス環境の作り方

ABW(Activity Based Working)の基本を理解する

ABW(Activity Based Working)とは、「『いつ、どこで、誰と働くか』を従業員が自律的に選択し、業務に合わせて最適な環境を使い分ける働き方」のことです。

オランダのコンサルティングファーム、ヴェルデホーエン社が提唱した考え方※1で、従業員が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を選ぶことを目的としています。

ABWの根底にあるのは、「人間の活動は多種多様であり、単一の画一的なオフィス環境では、すべての活動を効率的にサポートすることはできない」という思想です。

例えば、

  • 企画書を練る「高集中の作業」
  • チームでアイデアを出し合う「協業の作業」
  • クライアントと打ち合わせる「Web会議」
  • 同僚と雑談する「偶発的なコミュニケーション」

これらの活動は、それぞれ求められる環境が全く異なります。静かな個室が適している時もあれば、活気のあるオープンな空間が望ましい時もあるでしょう。ABWは、こうした多様な活動に対応できる複数の「場」を用意し、従業員が自らの意思でそれを選ぶことを可能にします。

その究極的な目的は、従業員の裁量権と自律性を高めることでエンゲージメントを向上させ、結果として組織全体の生産性を最大化することにあります。

【比較】ABWとフリーアドレス、何が違うのか?

「好きな場所で働けるなら、フリーアドレスと同じでは?」というご質問をよくいただきます。しかし、ABWとフリーアドレスは、その目的と根本的な思想が大きく異なります。

ここでは、その違いを3つの観点から明確に整理してみましょう。

観点フリーアドレスABW(Activity Based Working)
目的省スペース化、コスト削減が主目的生産性の向上、従業員エンゲージメントの向上が主目的
考え方全従業員分の固定席を常に用意しておくのは非効率従業員が活動に合わせた最適な環境を選択可能
環境均一な執務スペースが中心多様な機能を持つ複数のゾーン(集中、協業、リラックス等)で構成

フリーアドレスの多くは、オフィススペースの効率化やコスト削減を主な目的として導入されてきました。従業員は出社したら空いている席に座りますが、そのオフィス環境自体は画一的であることが少なくありません。言わば、「席の運用ルール」の変更です。

一方でABWは、「働き方の哲学」です。目的はあくまで生産性の向上。そのために、従業員の活動を分析し、集中、協業、Web会議、リラックスなど、様々な活動に対応できる多様な機能を持ったワークスペースを意図的に設計します。そして、従業員に場所の「選択権」を与えることで、自律的な働き方を促すのです。

現場での経験から言えば、「フリーアドレスを導入したが、結局いつも同じ人が同じ場所に座っている」「固定席より生産性が下がった」という声が聞かれることがあります。これは、場所の選択肢が実質的にない、あるいは活動に合わせた環境が用意されていないために起こる典型的な失敗例です。

ABWは、フリーアドレスの単なる進化形ではなく、異なるアプローチである※2と理解することが、最初の重要な一歩となります。

なぜ今ABWが注目されるのか?導入する5つのメリット

ABWがこれほどまでに注目を集める背景には、企業と従業員の双方にとって大きなメリットがあるからです。ここでは、代表的な5つのメリットを、経営と現場、両方の視点から見ていきましょう。

生産性の向上

最も大きなメリットは、やはり生産性の向上です。集中したい時は静かなブースへ、チームで議論したい時はモニターのあるコラボスペースへ。従業員が自ら最適な環境を選ぶことで、業務への没入感が高まり、無駄な時間やストレスが削減されます。ある調査では、ABWを導入した企業の多くが生産性の向上を実感しているというデータもあります。

従業員満足度と自律性の向上

「自分の働き方は自分で決める」という裁量権は、従業員のエンゲージメントと満足度に直結します。会社から信頼され、自律的に働くことを認められているという感覚は、仕事へのモチベーションを大きく高める要因となります。これは、優秀な人材を惹きつけ、定着させる上でも非常に強力な武器となるでしょう。

コミュニケーションの活性化

固定席の場合、どうしてもコミュニケーションは部署内や近くの席の人に限定されがちです。ABWでは、オフィス内を移動する中で、普段は接点のない他部署のメンバーと顔を合わせる機会が自然と増えます。カフェスペースでの偶発的な会話から、新しいアイデアやイノベーションの種が生まれることも少なくありません。

スペースの有効活用とコスト最適化

ABWはコスト削減が主目的ではありませんが、結果としてオフィスの利用効率が最適化されるという側面もあります。在席率や各エリアの利用データを分析することで、本当に必要なスペースの広さや種類を見極めることができます。これにより、無駄な賃料を削減し、その分のコストをより従業員が価値を感じる設備投資に回すといった、戦略的なファシリティマネジメントが可能になります。

企業ブランディングと人材獲得力強化

「私たちは従業員の自律性を尊重し、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を提供しています」というメッセージは、求職者にとって大きな魅力です。先進的で柔軟な働き方を導入している企業として、その姿勢を社外にアピールすることは、企業ブランディングと人材獲得競争において大きな優位性をもたらします。

導入前に知るべきデメリットと成功のための3つのポイント

多くのメリットがある一方で、ABWの導入は決して簡単な道のりではありません。計画なく進めると、かえって混乱を招き、生産性を低下させてしまう危険性もあります。ここでは、事前に知っておくべき代表的なデメリットと、それを乗り越え成功に導くための3つの重要なポイントを解説します。

考えられるデメリット

  • コミュニケーションの課題: 上司が部下の姿を見失い、マネジメントが難しくなる可能性があります。また、チーム内の一体感が希薄になったり、気軽な相談がしにくくなったりするケースも考えられます。※3
  • セキュリティ対応:オフィス全体が共有スペースになるため、PC画面の覗き込み、書類やデバイスの置き忘れ、機密情報の会話漏れといったリスクが格段に高まります。また、働く場所が社内外に広がることで、「社内だから安全」という従来の境界線がなくなります。安全でないWi-Fiの利用や、デバイス紛失時のリスクに対応しなければなりません。
  • 初期投資コスト: オフィス家具の買い替えやレイアウト変更、ITツール(予約システム、コミュニケーションツール等)の導入など、ある程度の初期投資が必要となります。

成功のための3つのポイント

これらのデメリットを乗り越え、ABWを成功させるには、以下の3点が不可欠です。

  1. 明確な目的設定と全社での共有:最も重要なのは、「何のためにABWを導入するのか」という目的を明確にすることです。「生産性向上」「イノベーション創出」「従業員エンゲージメント向上」など、自社の課題に合わせた目的を経営陣が具体的に言語化し、それを全従業員と粘り強く共有することが成功の土台となります。流行っているから、という理由だけで導入するのは最も危険です。
  2. 経営層の強いコミットメントと実践:ABWは、単なる制度変更ではなく「企業文化の変革」です。役員や管理職が旧来の働き方に固執していては、従業員は安心して新しい働き方に挑戦できません。経営層自らがABWの目的を理解し、積極的に様々な場所で働く姿を見せるなど、強いコミットメントを示すことが文化の醸成を加速させます。
  3. テクノロジーの戦略的活用: 勘や感覚だけに頼らず、テクノロジーを活用することがABWの成否を分けます。具体的には、誰がどこにいるか分かる「所在確認ツール」、会議室や集中ブースを予約する「座席予約システム」、そして円滑な遠隔コミュニケーションを支える「チャットツール」などが挙げられます。これらのツールを整備することで、ABWのデメリットを補い、メリットを最大化することができます。

ABWを成功させるには、こうしたポイントを押さえた上で、多様な活動に対応できる物理的な環境を整えることが大前提となります。 しかし、いきなり自社オフィスを大改装するのはハードルが高いと感じるかもしれません。

そのような場合、fabbitのようなコワーキングスペースやレンタルオフィスを活用するのも非常に有効な選択肢です。集中ブースから会議室、リラックスできるラウンジまで、ABWに必要な環境が予め揃っており、まずは一部のチームからスモールスタートで試してみる、といった使い方が可能です。

▼ABWを実践できるワークスペースの例を見てみる

ABWを実践するためのオフィス環境とは?

では、具体的にABWを実践するには、どのようなオフィス環境が必要なのでしょうか。重要なのは、従業員の多様な「活動(Activity)」を想定し、それぞれに最適化された「ゾーン」を用意することです。ここでは代表的な活動とゾーンの例をご紹介します。

想定される主な活動(Activity)

  • 高集中: 資料作成、データ分析、プログラミングなど、誰にも邪魔されずに没頭したい作業。
  • Web会議: 顧客や他拠点のメンバーとのオンラインでの打ち合わせ。
  • 共同作業(コラボレーション): 2〜4名のチームで、壁やモニターを使いながら活発に議論する作業。
  • 電話・短時間オンラインMTG: 周囲に配慮しつつ、短時間の音声コミュニケーションを行う。
  • リラックス・雑談: コーヒーを片手に同僚と気軽に情報交換したり、気分転換したりする時間。

各活動に対応するゾーンの例

これらの活動をサポートするため、オフィスには以下のような多様な機能を持つゾーンを配置します。

  • フォーカス・ゾーン: 図書館の閲覧室のように、私語や通話が禁止された高集中エリア。個室ブースや、視線が合わないように仕切られたデスクを配置します。
  • コラボレーション・ゾーン: 可動式のホワイトボードや大型モニター、自由に動かせるテーブルや椅子を配置した、活発な議論を促すオープンなエリア。
  • コミュニケーション・ゾーン: カフェのような雰囲気のラウンジエリア。リラックスした雑談から、偶発的なアイデアが生まれることを期待します。
  • フォンブース: 1人用の防音個室。周囲に気兼ねなく電話やWeb会議ができます。
  • 1on1ブース: 2名用の半個室。上司と部下の面談など、少しプライバシーに配慮したい対話に適しています。

このように、従業員がその時の活動内容に応じて、まるでパレットから絵の具を選ぶように、自ら最適な「場」を選択できる環境を考えていくことがABWを推進する上で重要です。

まとめ

今回は、次世代の働き方として注目される「ABW」について、その基本概念からフリーアドレスとの違い、具体的なメリット、そして成功のポイントまでを網羅的に解説しました。

導入への道のりは簡単ではありませんが、その先には、生産性と創造性に満ちた、新しい組織の姿が待っているはずです。

「自社にABWを導入できるか、専門家の意見を聞いてみたい」 「まずはスモールスタートでABWを試せる環境を探している」

このようにお考えの経営者様、ご担当者様は、ぜひお気軽にfabbitへお問い合わせください。

▼ABW導入に関するご相談・お問い合わせはこちら

参照・引用元一覧

*1. Veldhoen + Company – https://www.veldhoencompany.com/en/about-us/activity-based-working/ – ABWの提唱企業であり、その定義と哲学に関する最も根源的な情報源。
*2. OPTAGE for Business ABWとは?フリーアドレスとの違いや導入のメリット・手順を解説 https://optage.co.jp/business/contents/article/abw.html
*3. 「部下はいまどこに…」現代の中間管理職に求められるリーダーの資質とは【CBRE 坂口社長】に聞く https://next.rikunabi.com/journal/20181112_p01/