【完全版】オフィスの寸法・レイアウト設計ガイド|一人当たり面積から役職者配置、動線計画まで

オフィス移転やリニューアルの際、デザインやコンセプトに目が行きがちですが、「寸法」と「動線」は、その成否を分ける重要な要素です。本記事では、生産性と快適性を高めるためのオフィス設計の基礎を解説します。
この記事で分かること
- オフィス設計で生産性を最大化する「寸法」と「動線」の重要性
- 法律で定められた「一人当たり面積」と「通路幅」の絶対基準
- コミュニケーションを左右する代表的なレイアウトパターン
- ハイブリッドワーク時代に求められるオフィスの新しい考え方
- 会議室や集中ブースなど、スペース別の具体的な寸法ガイド
Contents
なぜ寸法と動線が重要?生産性に影響するオフィス設計の基礎

新しいオフィスの内装や家具を考える前に、まず検討すべきなのが「寸法」と「動線」です。これらはオフィスの「骨格」とも言える部分で、ここがしっかりしていないと、どんなに良い家具を置いても働きにくい空間になってしまいます。
生産性を左右する効率的な「動線」
「動線」とは、オフィス内で人が移動する経路のことです。例えば、自席からコピー機まで、あるいはチームメンバーの席まで、何度も往復する経路が複雑だったらどうでしょうか?無駄な動きが増え、時間も体力も消耗してしまいます。良い動線計画は、この無駄をなくし、従業員がスムーズに業務に集中できる環境を作ります。
法的要件と安全性の確保
オフィスの寸法は、実は法律によっても定められています。特に「通路幅」や「一人当たりの面積」には、従業員の安全と健康を守るための基準が存在します。例えば、災害時にスムーズに避難できる通路が確保されていなければ、それは安全な職場とは言えません。これらの法的要件を満たすことは、企業としての当然の責任であり、オフィス設計の大前提となります。
コミュニケーションと集中力のコントロール
寸法と動線は、従業員同士のコミュニケーションの量や質、そして個人の集中力にも影響を与えます。例えば、意図的に人が交差する「コミュニケーション動線」を設けることで、部署を超えた偶発的な会話が生まれ、新しいアイデアのきっかけになることもあります。一方で、執務スペースは静かで集中できる環境が求められます。動線を工夫することで、オフィス内に「静」と「動」のエリアを意図的に作り出し、働き方のメリハリを生むことができるのです。
【寸法編】一人当たり面積と通路幅の基本基準

ここでは、オフィス設計で最も基本的かつ重要な「一人当たり面積」と「通路幅」の基準について、法的要件と推奨値の両面から詳しく見ていきましょう。
一人当たり面積の考え方
「一人当たり、どれくらいのスペースが必要なの?」これは非常によくある質問です。実は、これには法律で定められた最低基準と、快適に働くための推奨値があります。
- 法律による最低基準: 厚生労働省が定める「事務所衛生基準規則」※1では、労働者一人あたりの「気積」を10立方メートル以上確保することが義務付けられています。これは、床面積と天井高を掛け合わせた体積のことです。一般的なオフィスの天井高を2.5m〜2.8mとすると、一人当たり約1.1坪〜1.2坪(約3.6㎡〜4.0㎡)が最低限必要な面積となります。ただし、これはあくまで最低ラインであり、備品や収納の面積も含まれるため、この面積で快適に働くのは難しいのが実情です。
- 一般的な推奨面積: 用途や運用前提によって適切な数値が変わります。本社機能を担うオフィスでは、会議・集中・収納を内包し将来の増減にも対応できるよう、1人あたりおおむね8〜10㎡(約2.4〜3.0坪)を目安とするのが現実的です。一方で、サテライトや省スペース運用を前提とする場合は、出社率を60〜70%程度にコントロールしたフリーアドレスを採用し、会議はオンラインや外部会議室を活用、紙収納は極小化、什器は省寸法タイプを選ぶなどの運用設計を条件に、1人あたり5〜7㎡(約1.5〜2.1坪)まで圧縮できます。これにより法令基準を満たしつつ、快適性を運用とレイアウトで担保できるでしょう。
フリーアドレスを導入する場合は、在籍人数ではなく、実際の出社率(例:70%)に基づいて座席数を設定するため、一人当たり面積の考え方も変わってきます。ただし、その場合でも全体の快適性を損なわないような配慮が必要です。
関連記事:【事例多数】失敗しないフリーアドレスのレイアウト設計|目的別の選び方と導入ポイントを解説
通路幅の基準
通路幅は、日常業務の効率性と緊急時の安全性の両方に関わる重要な寸法です。
以下の早見表を参考に、適切な幅を確保しましょう。
| 区分 | 本社標準の目安 | サテライト最小目安 | 補足・前提条件 |
| メイン通路 | 1,200〜1,600mm | 1,100〜1,200mm | サテライトは往来が限定的・台車運用なしを前提。避難経路は常に1,200mm以上を厳守 |
| デスク間通路 | 1,000〜1,200mm | 900〜1,000mm | 椅子の出幅が小さいチェア採用、同時立ち上がりが少ない運用で成立 |
| 収納前通路(扉・引出しあり) | 1,000〜1,200mm | 800〜1,000mm | 扉・引出しの可動域を考慮。サテライトは台車運用を想定しない |
| 最低限の単独通行 | 600mm(下限) | 600mm(下限) | 単独通行のみを想定。快適性は低め |
| 避難経路 | 1,200mm以上(厳守) | 1,200mm以上(厳守) | 法令(建築基準法※2 )・安全基準として必須。例外なし |
限られた面積を有効活用しつつ、快適な執務環境を整えたい場合、fabbitのコワーキングスペースのような柔軟な選択肢も有効です。必要な設備が整っており、効率的なレイアウトを自社で考える手間を省くことができます。
【配置編】コミュニケーションと役職を考慮した座席レイアウト

デスクをどのように配置するかは、チームの働き方やコミュニケーションのあり方を大きく左右します。また、経営層やマネジメント層にとって、「役職者の席をどこにするか」は重要な関心事です。
代表的なレイアウトパターンと動線
オフィスにはいくつかの代表的なレイアウトパターンがあります。それぞれの特徴と動線の関係を見てみましょう。
- 対向式(島型): 日本のオフィスで最も一般的なレイアウト。チーム内で視線が合いやすく、コミュニケーションが取りやすいのが特徴です。動線は主に島の外周になります。
- 同向式(スクール式): 全員が同じ方向を向くレイアウト。個人の集中力を高めやすい一方、コミュニケーションは取りにくくなります。銀行の窓口やコールセンターなどで採用されます。
- 背面式: 背中合わせにデスクを配置するレイアウト。振り返るだけでコミュニケーションが取れるため、チームワークと個人の集中のバランスが良いとされています。
- フリーアドレス: 固定席を設けないスタイル。部署を超えたコミュニケーションが活性化しやすい一方、誰がどこにいるか分かりにくいという側面も。動線はより自由で流動的になります。
会社における席の配置と役職
「社長の席はどこにあるべきか?」この問いに唯一の正解はありませんが、いくつかの考え方があります。
- 個室 vs オープンスペース: 伝統的には、社長や役員は個室にいるのが一般的でした。機密性の高い情報を扱ったり、重要な意思決定に集中したりするためです。しかし、近年では、経営層がオープンなスペースに席を構え、従業員とのコミュニケーションの活性化を図るケースも増えています。
- マネジメントのしやすさを考慮した配置: 管理職の席配置は、チームの生産性に直結します。部下の様子が分かり、すぐに相談に乗れるように、チーム全体を見渡せる位置(例えば、島の端)に席を設けるのが一般的です。部下との距離が近すぎるとプレッシャーになる可能性もあるため、適度な距離感を保つ工夫も必要です。
役員用の個室を確保しつつ、従業員には柔軟な働き方を促す環境を提供したい場合、fabbitのレンタルオフィスのようなサービスが有効です。プライベートな個室と開放的な共用スペースを両立できます。
【実践編】スペース別・動線を意識した寸法ガイド

ここからは、オフィスの主要なスペースごとに、より実践的で具体的な寸法を動線計画の観点から掘り下げて解説します。意外と見落としがちなポイントも多いので、ぜひチェックしてみてください。
執務スペース(デスク周り)
一日の大半を過ごす執務スペースは、最も緻密な寸法計画が求められる場所です。センチメートル単位の違いが、日々の快適性や生産性に大きく影響します。
- デスク自体の寸法
一般的なオフィスデスクにはいくつかの標準サイズがあり、働き方によって最適なものは異なります。- 本社(標準)
- 推奨サイズ: 幅1,400mm × 奥行700mm
- 特徴: 書類を広げたり、デュアルモニターを置いたりと、広々使えるサイズです。
- サテライトオフィス
- 推奨サイズ: 幅1,000〜1,200mm × 奥行600〜650mm
- 本社(標準)
- 特徴: ノートPCと24インチ程度のモニター1台での作業を想定した、省スペースなサイズです。椅子を引くスペース(引きしろ)
通路幅とは別に、デスクで作業する人が椅子に座ったり、席を立ったりするために必要なスペースを「引きしろ」と呼びます。椅子を後ろに引く動作を考慮し、デスクの端から最低でも750mmは確保するようにしましょう。このスペースが不足していると、立ち上がるたびに窮屈さを感じ、ストレスの原因となります。サテライトでは肘なし・小ぶりのチェアを採用することで650〜700mmまでの圧縮が現実的です。 - デスク間の距離
レイアウトパターンごとに、快適なデスク間の距離は異なります。
- 背面レイアウトの場合: 最も注意が必要なのが、背中合わせのレイアウトです。お互いが椅子を引いたときに、背中がぶつからないようにしなければなりません。理想は、両者の引きしろ(750mm + 750mm)と、その間を人が通る通路(600mm)を合わせて2,100mmですが、最低でも1,800mmは確保したいところです。これ以下の幅になると、どちらかが席を立つ際に、もう一方が椅子を前に引くなどの配慮が必要になります。
- 横同士の場合: デスクを横に並べる際の間の距離は、人が一人通れる幅として600mm以上あると良いでしょう。ただし、パーテーションなどを置く場合はその厚みも考慮してください。
エントランス・受付
エントランスは「企業の顔」とも言える重要な空間です。デザイン性はもちろん、訪問者がスムーズに出入りでき、快適に過ごせるための寸法計画が不可欠です。
- 受付カウンターの寸法
受付のスタイルによって、カウンターの高さは変わります。
- ハイカウンター(高さ1,000mm〜1,100mm): 立った状態でのコミュニケーションを想定した高さです。スタイリッシュな印象を与え、短時間でのやり取りに適しています。
- ローカウンター(高さ700mm〜750mm): 訪問者が椅子に座って記帳したり、落ち着いて話したりする場合に適しています。安心感や丁寧な印象を与えたい場合におすすめです。
- 待合スペースの寸法
ソファや椅子を設置する待合スペースでは、ゆとりを持った寸法計画が大切です。
- ソファとテーブルの間: 膝がぶつからず、圧迫感なく座れるように、400mm〜450mmの距離を確保しましょう。
- 通路スペース: 待合スペース内の人が通る通路は最低でも600mm、車椅子での通行も考慮するメイン動線であれば1,200mm以上を確保することが望ましいです。
- 車椅子への対応(バリアフリー)
多様な方が訪れる可能性を考慮し、バリアフリー設計を取り入れることは企業の社会的責任とも言えます。「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」※3に基づき、以下の寸法を確保することが推奨されます。
- 通路幅: 車椅子が問題なく通れるように、1,200mm以上を確保します。
- 回転スペース: 車椅子が方向転換できるよう、直径1,500mm以上の円が収まるスペースを受付前や通路の要所に設けることが理想です。
収納スペース(キャビネット・書庫)
書類や備品を保管する収納スペースは、意外と動線を妨げる原因になりがちです。計画段階でしっかり寸法を考慮しましょう。
- 扉の開閉スペースの確保
収納家具を配置する際は、そのもののサイズだけでなく、扉を開けたり引き出しを出したりするためのスペースを忘れてはいけません。
- 開き戸の場合: 扉の幅と同じだけのスペースが、キャビネットの前面に必要です。通路に扉が大きくはみ出すと、通行の妨げや衝突の危険があります。
- 引き出しの場合: 引き出しを最大まで引き出した際の奥行きを考慮し、その前で人が作業できるスペース(最低450mm程度)を確保しましょう。
- 書庫・キャビネット前の通路幅
収納スペースの前の通路幅は、その利用頻度や使い方によって適切な幅が異なります。
- 人が一人で利用する場合: 単に物を取り出すだけであれば、800mm程度でも問題ありません。
- 台車を利用する場合や人がすれ違う場合: 書類をまとめて運ぶために台車を使ったり、複数人が同時に利用したりする可能性がある場合は、1,200mm以上の幅を確保すると安全かつ効率的です。
会議室
会議室は、参加人数に合ったテーブルサイズと、人がスムーズに出入りできる動線の確保が不可欠です。本社機能の会議室では、テーブル周囲に1,000mmのクリアを確保すると着席中の背後通行にも余裕が生まれます。サテライトでは利用人数が限られる場合が多く、入退室動線を片側に集約し、同時通過を避ける運用を徹底することで、テーブル周囲を800〜900mmまで圧縮しても支障なく運用できます。小規模打ち合わせは集中ブースや共用スペースで代替し、必要に応じて外部の貸会議室を時間単位で活用する組み合わせが有効です。
また、 「必要な時に、必要なサイズの会議室だけを使いたい」というニーズは非常に多いです。そのような場合は、fabbitが提供する貸会議室のように、少人数のミーティングから大規模なセミナーまで対応可能なスペースを時間単位で利用するのも合理的です。
集中ブース
集中ブースは遮音性と視線遮蔽、そして圧迫感のバランスが鍵です。本社では幅1,000〜1,200×奥行き1,200〜1,400mm程度を確保すると、着座姿勢やモニター設置にも余裕が持てます。サテライトでは、スツール高と小さめの天板を組み合わせ、視線遮蔽パネルを追加する設計により、幅900×奥行き1,100〜1,200mmでも快適性を保てます。配置はメイン通路の直線上を避け、袖壁やコーナーで動線から外すと、体感の落ち着きが高まります。
リフレッシュスペース
リフレッシュスペースは、意図的に「回遊性」のある動線を設計することが、コミュニケーションを誘発する鍵となります。例えば、執務エリアから少し離れた場所にコーヒースタンドを設け、そこへ行くためにリフレッシュスペースを必ず通るように設計すると、自然と人が集まり、部署を超えた偶発的な会話が生まれるきっかけになります。
まとめ
本社機能とサテライト拠点では求められる寸法の思想が異なります。避難や法令の基準を最優先にしながら、本社ではゆとりある寸法で普遍的な使い勝手を確保し、サテライトでは出社率や会議方針、紙運用、什器仕様といった運用設計を前提に寸法を最小化していくのが現実的です。必要に応じてコワーキングや外部の貸会議室を組み合わせることで、過度な寸法削減による不快や非効率を避けながら、面積制約の中でも生産性を維持できます。本記事が、あなたのオフィス作りにとって、より具体的で実践的なガイドとなれば幸いです。
参照・引用元一覧
- 事務所衛生基準規則 – e-Gov法令検索: https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000043 – オフィスの気積(一人当たり面積)に関する法的根拠。
- 建築基準法 – e-Gov法令検索: https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201 – 通路幅や避難経路に関する基本的な法律。
- 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法) – 国土交通省: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000049.html – エントランス等のバリアフリー設計に関する公的ガイドライン。
