COLUMNコラム

サテライトオフィス導入の実践ガイド|メリット・デメリットと選び方のポイント

働き方改革やBCP対策が叫ばれる中、「サテライトオフィス」に注目が集まっています。この記事では、担当者が知るべき基本から具体的な選び方、導入後の運用ポイントまで詳しく解説します。貴社のオフィス戦略に確かな一歩を踏み出すための、実践的ガイドです。

この記事のポイント

  • サテライトオフィスの基本と、シェアオフィスとの明確な違い
  • 企業と従業員、双方の立場から見たメリット・デメリット
  • 自社の目的に合ったオフィスの種類と、失敗しない選び方の5つのポイント
  • 導入担当者が押さえるべきセキュリティや労務管理の実践的なポイント

今さら聞けない「サテライトオフィス」の基本

「サテライトオフィス」という言葉を耳にする機会は増えましたが、その正確な意味や他のオフィス形態との違いを自信を持って説明できますか? まずは、この新しい働き方の拠点の基本をしっかりと押さえることから始めましょう。

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィスとは、企業が本社や主要な拠点とは別に設置する、小規模なオフィスのことを指します。英語の “Satellite”(衛星)が語源で、本社を中心とした衛星のように存在するイメージです。 主な目的は、従業員が自宅や顧客先の近くで働ける環境を提供することにあります。これにより、通勤時間の削減や、営業活動の効率化、災害時の事業継続(BCP)など、多くの経営課題に対応することが可能になります。総務省の「令和3年版 情報通信白書」※1によると、テレワークをしたことがある回答者は38%で、その実施形態としてサテライトオフィスを利用している割合は4.1%となっており、一定の需要があることが分かります。本社機能の一部を分散させる「分散オフィス」という考え方にも繋がり、近年の多様な働き方を支える重要なインフラとして位置づけられているのです。

シェアオフィス・コワーキングスペースとの違い

サテライトオフィスを検討する際、必ずと言っていいほど比較対象となるのが「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」です。これらはしばしば混同されがちですが、その目的や機能には明確な違いがあります。

種類主な目的・特徴契約形態の傾向
サテライトオフィス自社の従業員の利用が前提。通勤負担軽減、営業効率化、BCP対策が主目的。企業が法人として契約
シェアオフィス複数の企業や個人が執務スペースを共有。コスト削減が主目的。法人・個人ともに契約
コワーキングスペース異業種のワーカーとの交流や協業(コラボレーション)を重視。コミュニティ機能が強い。個人事業主やスタートアップの契約が多い
レンタルオフィス個室の執務スペースを家具付きでレンタル。少人数での起業やプロジェクト利用に最適。法人・個人ともに契約

簡単に言えば、「誰が、何のために使うか」が大きな違いです。サテライトオフィスは「自社の従業員が、本社以外の場所で効率的に働くため」の施設であるのに対し、シェアオフィスやコワーキングスペースは、より広く「様々な所属の人が、それぞれの目的で働く場所」と言えるでしょう。

ただし、近年ではサービスが多様化しており、シェアオフィスやコワーキングスペースを、企業が法人契約してサテライトオフィスとして利用するケースが非常に増えています。この利用形態は「サービスオフィス型サテライトオフィス」とも呼ばれ、自社でオフィスを構えるよりも低コストかつ迅速に導入できるため、主流になりつつあります。

【企業・従業員別】サテライトオフィス導入のメリット・デメリット

サテライトオフィスの導入は、企業と従業員の双方に大きな影響を与えます。光の当たる部分だけでなく、影になる可能性のある部分も事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵です。ここでは、それぞれの立場から見たメリットとデメリットを具体的に掘り下げていきましょう。

企業側の4つのメリット

  1. コスト削減: 都心の一等地に大規模な本社を構える必要性が低下します。オフィスを分散させることで、賃料の高いエリアの床面積を削減し、固定費を大幅に圧縮できる可能性があります。また、従業員の交通費削減にも繋がります。
  2. 事業継続計画(BCP)の強化: 本社機能が災害やパンデミックで麻痺した場合でも、サテライトオフィスで事業を継続できます。機能と人材を物理的に分散させることは、リスクヘッジの観点から重要です。
  3. 生産性の向上と営業効率化: 従業員は移動時間を業務に充てることができ、顧客先近くのオフィスを拠点にすれば、より迅速な顧客対応が可能になります。これは、顧客満足度の向上にも直結するでしょう。
  4. 人材確保と定着: 勤務地の選択肢が増えることは、従業員にとって大きな魅力です。育児や介護といったライフステージの変化にも柔軟に対応できるため、優秀な人材の離職を防ぎ、採用競争においても有利に働きます。

企業側の3つのデメリットと対策

  1. セキュリティリスクの増大: オフィス分散をすると情報漏洩のリスクは、高まります。
    対策: VPN接続の義務化、デバイス管理(MDM)ツールの導入、公共Wi-Fiの利用禁止ルールの徹底、セキュリティ教育の定期的な実施など、多層的な対策が不可欠です。
  2. 勤怠管理・業務評価の複雑化: 従業員の働きぶりが見えにくくなることで、勤怠管理や公正な人事評価が難しくなるという懸念は、担当者が抱きやすい不安の一つです。
    対策: クラウド型勤怠管理システムの導入、業務の進捗を可視化するプロジェクト管理ツールの活用、成果物(アウトプット)を重視した評価制度への見直しなどが有効です。
  3. コミュニケーションの希薄化と帰属意識の低下: 対面の機会が減ることで、偶発的な会話から生まれるアイデアやチームの一体感が失われる可能性があります。
    対策: 定期的なWeb会議やチャットツールの活用はもちろん、月に一度の「本社出社日」を設けたり、オンラインでの雑談会を企画したりするなど、意図的にコミュニケーションの機会を創出する工夫が求められます。

従業員側の3つのメリット

  1. 通勤時間の削減とワークライフバランスの向上: 満員電車での長い通勤から解放されることは、身体的・精神的ストレスを大幅に軽減します。プライベートな時間が増え、生活の質(QOL)が向上します。
  2. 集中できる環境の確保: 自宅では集中しにくい、という方も少なくありません。サテライトオフィスは、仕事に必要な設備が整った「集中するための場所」として機能します。
  3. 自律的な働き方の実現: 働く場所や時間をある程度自分でコントロールできることは、従業員の自律性を促し、仕事へのモチベーションを高める効果が期待できます。

従業員側の2つのデメリットと対策

  1. 同僚とのコミュニケーション不足による孤独感: 周囲に相談できる同僚がいない環境は、時に孤独感や業務上の不安に繋がります。
    対策: 企業側は、メンター制度やオンラインでの相談窓口を設置することが有効です。従業員自身も、チャットツールなどを活用し、意識的に同僚と連絡を取り合うことが大切です。
  2. オンオフの切り替えの難しさ: 特に自宅近くのオフィスを利用する場合、仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちです。
    対策: 「オフィスを出たら仕事の通知はオフにする」など、自分なりのルールを決めることが重要です。始業・終業時に簡単な日報を提出するルールなども、気持ちの切り替えに役立ちます。

自社に合うのはどれ?サテライトオフィスの種類と選び方のポイント

「サテライトオフィス」と一括りに言っても、その形態は様々です。自社の目的や文化に合わないオフィスを選んでしまっては、せっかくの投資も効果が半減してしまいます。ここでは、代表的なオフィスの種類と、失敗しないための選び方のポイントを解説します。

3-1. サテライトオフィスの主な種類

サテライトオフィスは、その立地や機能によっていくつかのタイプに分類できます。

  • 都市型サテライトオフィス: 主要ターミナル駅の近くなど、交通の便が良い都心部に設置されます。複数の路線が使えるため、様々な居住地の従業員が集まりやすく、営業拠点としても活用しやすいのが特徴です。
  • 郊外型サテライトオフィス: 従業員の居住エリアが多い郊外の駅周辺などに設置されます。職住近接を実現し、従業員の通勤負担を軽減することが最大の目的です。
  • 地方型サテライトオフィス: 地方都市に設置し、本社機能の一部を移転したり、Uターン・Iターン人材の受け皿としたりします。コスト削減や地域貢献にも繋がります。
  • 専用型(自社専用): 自社で物件を契約し、内装なども自由に設計するタイプ。セキュリティレベルを高く保ちやすい反面、初期投資や運用コストは高くなります。
  • 共用型(サービスオフィス利用): 複数の企業が利用するシェアオフィスやコワーキングスペースを法人契約するタイプ。低コストかつ迅速に導入でき、必要な時に必要な分だけ利用できる柔軟性が魅力です。現在の主流はこちらのタイプと言えるでしょう。

3-2. 失敗しないための5つの選び方ポイント

あなたの会社に最適なサテライトオフィスを見つけるために、以下の5つのポイントをチェックリストとして活用してみてください。

  1. 【目的】何のために導入するのか?
    ・「営業効率化」が目的なら顧客先に近い都市型、「従業員の通勤負担軽減」なら郊外型が適しています。目的を明確にすることが、全ての判断の出発点になります。
  2. 【立地】誰がどこで使うのか?
    ・従業員の居住地データを分析し、最も多くの従業員がアクセスしやすいエリアはどこかを見極めましょう。特定の部署が使うなら、その部署のメンバーの利便性を最優先に考えます。
  3. 【設備】どのような業務を行うのか?
    ・Web会議が多いなら、防音性の高い個室やフォンブースは必須です。機密情報を扱うなら、施錠可能な個室や専用エリアが求められます。複合機、モニター、ネット回線の速度など、業務に必要なインフラが整っているかを確認しましょう。
  4. 【セキュリティ】どこまでのレベルを求めるか?
    ・受付スタッフの有無、入退室管理システム、監視カメラの設置状況、個室の施錠方式、ネットワークのセキュリティポリシーなどを細かくチェックします。自社のセキュリティ基準を満たしているかが極めて重要です。
  5. 【コスト】費用対効果は見合うか?
    ・月額料金だけでなく、初期費用、従量課金の有無、会議室の利用料金なども含めたトータルコストで比較検討します。削減できる本社の賃料や交通費と比較し、投資対効果をシミュレーションしてみましょう。

fabbitは貴社のニーズに合わせた豊富なオフィスとオプションを取り揃えてます。

導入を成功させるための重要ポイント【法人担当者必見】

サテライトオフィスの導入は、単に「場所を契約すれば終わり」ではありません。むしろ、契約してからが本番です。ここでは、導入担当者が直面する実務的な課題と、その解決策を具体的に解説します。

セキュリティ対策のポイント

オフィスが分散するということは、それだけ管理の目が行き届きにくくなるということです。常識や善意に頼りすぎるのではなく、ルールとテクノロジーでしっかりとガードを固める必要があります。

  • ルール作り: まず、「サテライトオフィス利用規定」を策定しましょう。公共Wi-Fiの利用禁止、離席時のPCロックの徹底、機密書類の取り扱いルール(持ち出し禁止、シュレッダーの義務化など)を明文化します。
  • ITインフラ: VPN(Virtual Private Network)を導入し、オフィス外からのアクセスは必ずVPN経由に限定するのが基本です。また、PCやスマートフォンの紛失・盗難に備え、遠隔でデータを消去できるMDM(Mobile Device Management)ツールの導入も強く推奨します。
  • 物理的セキュリティ: 利用するオフィスの物理的なセキュリティレベルも重要です。24時間対応の監視カメラ、ICカードによる入退室管理など、信頼できる設備が整っているかを確認しましょう。

勤怠・労務管理の方法

「見えない場所で、どうやって従業員の働き方を管理するのか?」これは経営層から問われやすいポイントです。

  • 勤怠管理: クラウド型の勤怠管理システムを導入し、PCのログオン・ログオフ時間や自己申告によって労働時間を記録するのが一般的です。GPS機能付きのシステムもありますが、プライバシーへの配慮から導入は慎重に検討すべきでしょう。重要なのは、労働時間を正確に把握し、長時間労働を防ぐ仕組みです。
  • 業務管理: 日報や週報の提出をルール化するほか、プロジェクト管理ツールを活用して、タスクの進捗状況をチーム全体で可視化することが有効です。「誰が、何を、いつまでに行うのか」が明確であれば、場所が離れていても業務は円滑に進みます。
  • コミュニケーション: 孤独感や連携不足を防ぐため、毎日決まった時間にオンラインで朝礼を行ったり、部署ごとに雑談専用のチャットチャンネルを用意したりするなど、意識的なコミュニケーションの場作りが成功の鍵を握ります。

社内への導入・浸透のコツ

どんなに素晴らしい制度も、社員に利用されなければ意味がありません。導入を成功させるには、丁寧な説明と利用を促す工夫が必要です。

  • 明確な目的の共有: なぜ会社はサテライトオフィスを導入するのか、その目的(生産性向上、ワークライフバランス支援など)を経営層から全社員に向けて明確に発信しましょう。これにより、社員は「会社が自分たちの働きやすさを考えてくれている」と感じ、前向きに制度を受け入れやすくなります。
  • スモールスタートと段階的計画: 最初から全社で一斉に導入するのではなく、特定の部署や希望者から試験的に導入する「トライアル期間」を設けるのがおすすめです。特にスモールスタートを成功させるためには、段階的な計画が不可欠です。以下に「トライアル導入3ヶ月ロードマップ」の一例を示します。
フェーズ期間の目安主なタスク成功のポイント
計画・準備1ヶ月目・導入目的、対象部署/従業員の定義・候補オフィスのリストアップと内覧・セキュリティ/労務管理ルールの素案作成・目的を明確にし、関係者で合意形成する・従業員の居住地データを分析し、立地を検討する
試験導入・改善2ヶ月目・トライアル利用開始・利用者へのアンケート実施(週次/月次)・課題のヒアリングとルール改善・問題が発生したら迅速に対応する体制を組む・「使いにくい」という声を積極的に拾い上げる
評価・本格検討3ヶ月目・トライアル結果の評価(コスト、生産性、満足度)・本格導入の可否を判断・経営層への報告と全社展開計画の策定・定量的(コスト削減額)と定性的(満足度)の両面で評価する・トライアル結果を基に、全社展開時の課題を予測する
  • 利用ルールの周知徹底: 利用対象者、利用可能時間、予約方法、経費精算のルールなどをまとめた分かりやすいマニュアルを作成し、説明会を実施しましょう。「使い方が分からない」という理由で利用されない、という事態を避けることが重要です。

費用対効果の考え方とシミュレーション例

サテライトオフィスの導入は「投資」です。担当者には、経営層に対してその投資対効果(ROI: Return on Investment)を説明する責任が求められることもあるでしょう。稟議を通すための具体的な考え方を見ていきましょう。

【基本的な考え方】 ROIは、大まかに「削減できたコスト」が「かかったコスト」を上回るかで判断します。簡易的な計算式は以下の通りです。

削減コスト(本社の賃料削減額、従業員の交通費など) - 導入コスト(サテライトオフィス利用料など) = 費用対効果

【シミュレーション例:従業員10名が郊外型オフィスを利用】
▼削減コスト
・本社オフィスの賃料
・共益費:10席分のスペースを解約(月額20万円の削減と仮定)
・従業員の通勤交通費:10名分(月額15万円の削減と仮定)

→ 削減コスト合計:月額35万円

▼導入コスト
・共用型サテライトオフィス利用料:10名分(月額25万円と仮定)

→ 導入コスト合計:月額25万円

【結果】
このケースでは、月あたり10万円の直接的なコスト削減効果が見込めます。

fabbitのようなサービスオフィスを利用すれば、自社でオフィスを構える際に必要な内装工事費や什器購入費といった初期費用(イニシャルコスト)を大幅に抑えることが可能です。

さらに、数値化しにくい「生産性向上」「従業員満足度の向上による離職率低下」「採用競争力の強化」といった間接的な効果も加味して、総合的にメリットを提示することが、経営層の理解を得る鍵となります。

まとめ

サテライトオフィスは、コスト削減や生産性向上だけでなく、従業員の満足度を高め、企業の持続的な成長を支える有効な選択肢の一つです。自社の目的を明確にし、適切なオフィスを選び、丁寧な運用ルールを設計することで、その効果を最大限に引き出すことができます。新しい働き方への第一歩を踏み出しましょう。

導入に関するご相談や、
実際のオフィスを見てみたい方はお気軽にご連絡ください。

参照・引用元一覧

※1:令和3年版 情報通信白書|総務省 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd123410.html